仮面ライダードライブの痛チョコを作った話 〜最終話 贈呈〜
ドライブの痛チョコも、工程 1、2ときて完成し、いよいよバレンタイン当日を迎えた。
さて、今回のバレンタイン、忘れてはならないのはテーマである。
私は「バレンタイン痛チョコ計画〜泣いてもいいんだよ大作戦〜」と銘打ち、プレゼントのインパクトで彼を驚かせ、嬉し泣きさせてみようと意気込んでいた。
つまり、彼が泣くか否かが、今回の成功・失敗を図る大きな指標になるわけだ。
なぜ純粋に、喜んでもらえた♡楽しかった♡ちょー幸せ♡だいすき♡=成功、という構図ではダメなのかという疑問が一週間経って記事を書いている今浮かんできたが、正直そんな発想がなかったの一言に尽きる。もはや私の中で彼を喜ばせることより驚かせて泣かせることが目標になっていた。
優しさや健気さ、可愛げなどそこには存在しない。
大体、幸せ♡だいすき♡とかいう個人的な感情のアピールを発信する人が純粋であるはずがあるだろうか?古典的な是非論争だが、私はそれを求めている人がどこにいるのかと聞きたい派である。
ただ自慢したかったり、自分の中で幸せだという確証が得られないから他人と比較することで満足を得ようとする行為なのではないか。
それとも直接お礼を言うだけでは飽き足らず、発信することによって不特定多数に対しても相手の愛情ぶかさを印象付け、株を上げる効果を狙っているのだろうか?それに成功したとしてもそんないい人と一緒にいる私勝ち組、人のことを褒められる私お育ちのいい子♡のような心理が垣間見えるような気がしてならない。
これはただ私の醜いルサンチマンだというのもまた確かだろう。しかしそんな気持ちになってしまう卑しく悲しい人間がいるこの世界に、個人的な愛のメッセージを発信するのもいかがなものか。
優しさや健気さ、可愛げなどそこには存在しない。
醜い論争はともあれ、お菓子を携えた私は当日、サプライズに燃えて待ち合わせ場所に到着した。
正確に言えば、私はゆっくりと睡眠をとり、ゆっくりと身支度をし、お菓子を携え、人をコケにしたようなテーマを掲げて待ち合わせの一時間後に到着した。
優しさや健気さ、可愛げなどそこには存在しない。
愛、建前、本音、自尊心、自己愛、男性の勘違い、女性の傲慢…純文学にありがちな主題が水面下で渦巻くなか、最大のイベント・贈呈がやってきた。いよいよ作戦開始である。
プレゼントを手渡し、はじめに取り出してもらうのがお品書き。
第0話に書いた通り、私はインパクト要因として痛チョコを作ったが、その他にトリュフ、マフィン、クッキー、ケーキポップも準備していた。さらに仮面ライダー1号とショッカーのチョコレートも購入済みだ。
このままではそれぞれのお菓子の説明も大変である。そこで私はお菓子の内容整理のため、このようなお品書きを作成し同封していた。
お気づきだろうか?
ブリブリ溢れ出る優しさ、健気さ、可愛げのことではない。自己満女子力のことは百も承知である。
左ページ、ライダーチョコのところに、?があることにだ。これが痛チョコのことを指しているのである。私はサプライズの茶目っ気にしては分かり易すぎる布石を打ってしまったことを一瞬後悔した。
お品書きを見てもらった後は、順当にトリュフ、マフィン、クッキー、ケーキポップを先に開封してもらうことにした。
ちなみにトリュフがこちら。8種類のものを作ってみたが、とても楽しかった。コツは成形したガナッシュをよく冷やすこと。冷凍庫がオススメだ。キンキンに冷やすことで、温かい溶けたチョコレートに浸けた時もガナッシュが溶け出さず、チョコレートが早く固まるため形が綺麗に作れる。ただ、早く固まる分トピングにもスピードが要求される。
ガナッシュを溶けたチョコレートに浸し、てっぺんを下にした状態でくるくる回転させて全体にチョコレートをつけるとこんな渦巻きの模様ができる。この工程がとても楽しい。
個人的には男子受けより女子受けしそうな見た目だと思うが、女子力高い彼女っぽさが出れば私の自尊心は満足するのだからこれでいいのである。バレンタインのチョコレートが100%男性のために作られていると思っている乙女系男子がいたらそれは幻想だということだけ、そっと囁きたい。声を大にして叫ばないのは、女性側のフェミニンな体裁を保つ上で、夢から覚めないでいられるほうが都合がいいからである。
さて、サプライズの用意はお品書きだけではない。せっかく作った痛チョコ、登場の仕方にも一工夫がないとつまらないだろう。
最後に開けてもらうことになった仮面ライダーチョコにはちょっとしたお話があった。というのもこれらのチョコレートは市販品だったわけだが、あろうことか彼の目の前で購入(笑)しており、しかも彼の自宅で保管してもらっていた(笑)ため、何が入っているかは両者織り込み済みだったのである。
だが私は彼を泣かせなければならない。そこでこの期待値の低さを存分に利用することにした。彼が自宅から持ってきた(笑)袋を預かり、彼が席を外したすきにライダーチョコの下に痛チョコを忍ばせておいたのである。これで都合よく手作りお菓子との隔離が成立するし、余計な袋を持たずに済むことでその袋何?なにかまだあるの?といった予感を与えずにいられる。
これでサプライズの準備は整った。少ないエネルギーでできることで最大限の効果を狙ってしまうのは私のさがである。ズボラ×サプライズ=ライフハック。
ありがたいことに彼にはベーシックメニューのお菓子たちから織り込み済みのライダーチョコにまでも驚きの言葉と賛辞をいただき、これもう痛チョコなくても泣いただろうなと思った。
しかしそこはどうしても開けてもらいたいところである。果たしてfinallyいよいよat last、彼が「なにかある!」といいながら袋の底から痛チョコ入りの白い箱を取り出した。
OPEN!
痛チョコは割れても溶けてもおらず、完全に無事な姿だった。さすがにプチプチの梱包材、紙ナプキン、保冷剤入りの完全防備のラッピングを施して行っただけある。前日に雑な運搬の仕方をしたことで買ったばかりのミラーレスデジタル一眼レフをぶっ壊していた私は運搬にかなりの恐怖を抱いていたため、ほっとした。
というわけで無事に製作・運搬・贈呈・感謝の4ステップをこなし、彼に喜んでもらえたところで、バレンタインは成功ということで幕を閉めさせていただきたい。
バレンタインというのはやはり、愛のやりとりのイベントであって、泣かせたら成功、泣かなかったら失敗とか、そういうことではないだろう。綺麗にお菓子を作りたいとか、相手に喜んでもらいたいとか、そういう純粋な思いは女子の可愛さであって、バレンタインの醍醐味の一つと言っていいのではないだろうか。最後にいい話になってしまって、なんだか照れくさいし、申し訳ない。でも、喜んでもらえて、ちょーうれしかった♡みんなも素敵なバレンタインだったらいいなあ♡♡
ッシャ!
かくして私の「バレンタイン痛チョコ計画〜泣いてもいいんだよ大作戦〜」は成功に終わったわけだが、「食べるのもったいないとかないタイプだから〜」などと言っていた彼が一週間経った今でも痛チョコを食べる気配がない。
それも納得、やはりあげたものが多すぎたようだ。
そろそろ何かしらダメになってしまう頃だと思うので、一人にこれほどの量をあげる必要はないと私も思う。けれども、なんでも喜んでくれるお優しい男性がいるからバレンタインはなくならないのではないだろうか。優しい男性ありがとう。
〜完〜
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仮面ライダードライブの痛チョコを作った話 (5)